2024年6月7日、台北で開催された、中国科技大学建築系卒業設計展に、柳澤教授とヤップ助手が、ゲスト審査員として参加しました。
会場である松山文創園区は、敷地6.6ヘクタールにも及ぶ、元タバコ工場からコンバージョンされたカルチャーセンターです。中国科技大学を含む10大学から約300作品が、リノベーションされた倉庫に展示されています。
審査は午前9時から始まり、事前に選抜された12作品を中心に、ポスターセッションが行われました。本学部の卒業設計と異なる点として、卒業設計は5年次に行うことや、一つの作品に複数人で取り組める点が挙げられますが、総じて精密なCGを用いたプレゼンテーションとデジタルファブリケーションによる模型の完成度が非常に高く、見習うべき点が多くありました。
ポスターセッション終了後、上位3組による発表と質疑応答が行われました。偶然ではありますが、3組とも環境問題をテーマに構想された意欲的な作品です。1位である「建築・環境学部賞(大塚賞)」に選ばれた「最大接触面」という作品は、工業地帯の空気汚染問題に対して、空気洗浄機の仕組みを参考に、汚染物質を吸収できるオフィスタワーを提案しました。吸収された粉塵は、再生建材の材料に利用するなど、プログラムも徹底的に考案されました。「柳澤賞(2位)」に選ばれた「網住一片茶林」は、茶畑の害虫問題に着目し、蜘蛛を育成する研究所と観光センターを提案し、食物連鎖を利用した害虫対策を考案しました。3位の「頭城藻到田」は海洋のプラスチックごみ問題に着目して、海上に建築を浮かべ、その表面にのりを培養して、バイオプラスチックを生産する工場を提案しました。どれも独創的なアプローチで環境問題に取り組み、建築の形態にとどまらず、実際の仕組みまで考案されており、大変な力作でした。
発表終了後、総評と授賞式が行われました。総評では、建築・環境学部を代表して柳澤教授が、「建築」と「環境」の2つの評価軸について説明し、日本と台湾における卒業設計へのアプローチや問題意識の共通点と相違点について感想を述べました。授賞式では、賞状のほかに、副賞として神奈川県の手づくり風鈴が贈られ、台北の会場に日本の音が届けられました。
同日に国立高雄科技大学の教員と学生と、それぞれ対面とオンライン形式で交流することができました。国立高雄科技大学は、工学に特化した大学で、デザイン系はありませんが、「営建工程系」という建築に特化した構造系と環境系の研究分野をもつ大学です。学生とのオンラインミーティングでは、日本の建設業界の現状や、設計事務所の働き方など、学生からの質問が多岐にわたり、海外に進学あるいは就職することへの関心の高さが伺えました。
すべてのイベントが終了し、中国科技大学の教員と会食を兼ねた懇談会が開催されました。最後にTang学科主任より、感謝状をいただきました。今回一連の交流イベントは、中国科技大学のChi助教を中心に、台湾の多くの方々から、細やかなご配慮をいただき、この場を借りて感謝を申し上げます。今後教員のみならず、学生を含めた国際交流がより盛んになるように、尽力してまいります。