2023年7月22日(土)関東学院大学 建築・環境学部創立10周年を記念した連続シンポジウム第2回講演会が5-101ホールで開催されました。シンポジウムは対面オンライン併用形式で行われ、会場では約70名、オンラインでは約40名の参加がありました。
柳澤教授による司会進行の元、日本、イギリス、デンマークを中心に、世界各地で建築作品を手掛ける構造設計事務所ストラクチャード・エンヴァイロンメントの代表である構造家アラン・バーデン先生を迎え、「脱炭素に効く構造デザイン」と題してご講演いただきました。バーデン先生のほか、本学部の卒業生である構造家・田畠氏と神戸教授によるショートレクチャーとディスカッションも行われました。
冒頭に大塚学部長による挨拶が行われました。アラン・バーデン先生が構造設計を担当した、本学の大沢記念建築設備工学研究所を事例に、意匠・設備・構造が融合し、分野横断した建築デザインの大切さについて説明がありました。
次にバーデン先生による講演が行われました。前半では、人類の経済活動から起因する地球温暖化の危機を、様々なデータと映像をもって説明していただきました。バーデン先生は、建築に関わる全ての人はこの危機を強く認識し、建築物のライフサイクルで発生する二酸化炭素の削減に努めるべき、と話していただきました。
後半では、構造家としてどう脱炭素に貢献できるか、実例を通して紹介していただきました。「素材を最小限に」、「施工エネルギーを最小限に」、「再利用・リユースを最大限に」、「新素材を開発する」の4つのカテゴリーに分けて、それぞれの作品が簡潔に説明されましたが、その中でも、椅子を利用したミラノトリエンナーレの仮設ステージや、頭髪とナッツ殻を混合して開発した新素材で制作した曲面屋根が大変印象に残りました。最後にバーデン先生から、ぜひ日本初の低炭素建築学科を設立してほしいと提案していただき、講演を締め括りました。
続いて、神戸教授と田畠氏によるショートレクチャーがありました。木質構造の研究者である神戸教授は、世界中の中大規模木造の先進事例を紹介しながら、木造の利用促進だけではなく、林業経営の健全化や、山林の維持管理を担う人材の育成の大切さについて話しました。田畠氏は卒業生の観点から、バーデン先生との出会いや、大学卒業から今日に至るまでの活動について紹介していただきました。田畠氏は、本学部2年生向けの演習科目であるビルディングワークショップの非常勤講師を長く務められており、より多くの学生に構造デザインに興味を持ってもらえるように、構造デザインの「オタク」として「カッコイイ」構造デザインを日々学生に伝えている、とのことでした。
その後、質疑応答が行われ、柳澤教授から予め登壇者に提示した質問の回答も紹介されました。その中で「構造と環境、どのように結びつくと思いますか?」という質問に対して、バーデン先生は「構造デザインは私たちの環境全体に影響を与えます。私は、この2つは単に関連しているというだけでなく、むしろ結びついていると考えています。建物や橋だけでなく、(中略)人間の活動はほとんどすべて構造化されている。私たちが構造設計をコントロールしない限り、地球を救うことはできないだろうと考えます。 だから私のオフィスは構造化環境と名付けています。(一部抜粋)」と回答され、構造デザインを通して地球環境に貢献するバーデン先生の姿勢は、聴講する学生にとって大いに刺激になったのではないでしょうか。
講演終了後、5-102ラウンジで懇親会が開催されました。歓談が尽きない中、第2回連続シンポジウムが幕を閉じ、最後に皆さんで大沢記念設備研究所を背景に記念撮影を行いました。
ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました。10周年記念連続シンポジウムの第3回は、芝浦工業大学教授・秋元孝之先生を講演者に迎え、12月2日(土)に横浜関内キャンパスで開催される予定です。ぜひご参加をお待ちしております。