2025年12月7日、呉市の新日本造機ホールにて「鎮守府日本遺産シンポジウムin 呉」が開催されました。https://www.city.kure.lg.jp/site/kure-japanheritage/kyugunsinpo2025.html

今年で5回目となるシンポジウムは、横須賀市、呉市、舞鶴氏、佐世保市の旧軍港四都市にて共同開催されているイベントです。「鎮守府」とは近代国家を目指す明治期の日本が定めた旧海軍の行政機関で、その本拠地となる軍港と共に設置されました。このシンポジウムは往時の雰囲気を色濃く残す旧軍港四市のまちづくりと、100年を超す歴史的建造物群を活かした文化観光のありかたを考えようというものです。
建築・環境学部の黒田泰介教授は第一部の研究発表「理系で読み解く日本遺産」にて、横須賀市浦賀に残る明治期のレンガ造ドライドックである浦賀船渠第1号ドックの改修過程について発表しました。浦賀ドックは民間では最初期の施設で、横須賀鎮守府の海軍工廠と協力して、多くの駆逐艦の建造や修理にも携わりました。
ドックとは船のメンテナンス用の施設であり、海に面した大きな堀のような空間です。船が入渠した後、ポンプで水を排水してドック内を空にして、船底の検査や修理を行います。浦賀ドックでは1899(明治32)年の竣工から2003年の閉鎖に至るまで、入渠する船のかたちに併せて多くの改造が行われてきました。発表では3Dスキャンによって精緻に記録された実測図面を建造当時の古図面と比較しながら、浦賀ドックの改修過程を読み解きました。




研究発表では各市の研究者より、戦争遺跡を調査するロボットの開発やVRを使った遺跡の保存、呉市内に残る海軍施設の調査報告が行われ、鎮守府遺産研究の魅力が語られました。後半のシンポジウムでは軍港としての呉の魅力に関する講演や鎮守府日本遺産のストーリーを活かした文化観光の今後について検討されました。
横浜市と横須賀市の境界近くに位置する関東学院大学八景キャンパスもまた、旧海軍の工場跡地を転用したものです。地域の歴史と文化に根ざした研究活動を、社会連携の一環として今後も続けていきます。