授業紹介

建築・環境棟 環境・省エネルギー活動と学修教材

建築・環境学部では、2014年6月に竣工した5号館(建築・環境棟)において、学生と教員が中心となり、快適な空間を創造する活動を行っています。この建物には、様々な環境共生技術が盛り組まれており、建物自体が学修教材です。この建物を用いて、建築・環境教育のアクティブ・ラーニングを促進しています。
建築・環境棟に取り入れられた様々な環境調整技術について、いつ、どのような操作を行うか、学生と教員が考え、省エネルギーについても考慮しながら行動しています。
さらに、自分たちで設定した環境が快適かどうかを確認するため、空気・熱・光環境などの環境実測も行っています。
ここでは、この建物を使って学生が行っている環境・省エネルギーと省資源を考えた総合的な学修活動を紹介していきます。

(1)ダブルスキンと自然換気
(2)天井放射空調と快適性
(3)クール/ヒートチューブによる熱利用
(4)臨海地域での地中熱利用ヒートポンプシステム
(5)大空間製図室と空調システム
(6)節水と雨水利用
(7)光環境と昼光利用
(8)再生可能エネルギーの利用
(9)ZEBへの取り組み
(10)メンテナンスと維持管理
(11)総合的な建築・環境教育
(12)建築・環境教育や技術開発への様々な取り組み

(1)ダブルスキンと自然換気

南面と西面を繋いだL字型のダブルスキンとなっており、夏期には南面と西面の日射を利用して熱除去を促進し、冬期には断熱効果の向上に寄与しています。中間期には、自然風を室内に導き空気の流れを体感しながら、教育・研究を行います。

中間期における温熱環境評価<環境省エネ活動(1)>


2016/11/09 Posted by kgu9. Category: (1)ダブルスキンと自然換気

マルチモードダブルスキンが付属しているスタジオの中間期における自然通風効果(温熱環境)について調査しました。
中間期にスタジオで自然通風を行うことで、冷涼感を得ることができ、温熱環境が改善される効果が期待されます。
温熱環境とは図1に示す6つの要素から成り立ち、また評価基準としても用いられます。

図1 温熱環境6要素

温熱環境を評価する方法はいくつかありますが、本測定では一般的によく用いられている予測平均温冷感申告(PMV)と自然通風利用建物向きに開発されたAdaptive Modelと呼ばれるこの2つで評価を行いました。まずPMVで評価する場合、環境側要素については写真1のPMV計を設置し測定を行います。人体側要素については測定中のスタジオに在室した学生がどんな作業をしていたかの代謝量とどんな服装をしていたかの着衣量を設定します(写真2)。これらを用いて方程式を解くことで、PMV値を算出します。PMV値は±0.5の範囲が快適域と呼ばれています。結果を図2に示します。

写真1 PMV計
写真2 スタジオおよび学生の様子
図2 スタジオのPMV値

午前中は比較的に晴れていましたが、午後から曇りとなったため外気温が下がってしまいました。それに伴いPMV値についても若干減少傾向を見せているものの、快適域から外れることはありませんでした。一日を通して安定した温熱環境が得られている結果となりました。

次にAdaptive Modelでの評価です。このモデルは自然換気可能な建物に在室する居住者は、空調された空間にいる居住者よりも室温(正確には作用温度)の許容範囲が広がることを示しているものです。同モデルでの外気温による室温の許容範囲を図3中の実線(90%の居住者が許容)、点線(80%の居住者が許容)に示しています。本測定では作用温度の代わりに写真1のグローブ温度計によって測定されたグローブ温度を用いて評価しました。その結果を図3に示します。

図3 スタジオの快適温度分布

全測定値が許容値の80%以内にあり、さらにその内測定値の8割以上が90%以内にあり、温熱環境が非常に良好なことがわかりました。

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(2)天井放射空調と快適性

授業で使用するデザインスタジオ内の天井に、形状・設置方法の異なる放射パネルと冷温水コイルを配置し、学生が快適性や温熱感の違い等を体験することができます。熱環境や空調設備の学修の教材として活用しています。

夏期学修実測(2016/7~)<環境・省エネ活動(2)>


2016/10/05 Posted by kgu9. Category: (2)天井放射空調と快適性

2016年7月1日~3日 昨年に行った夏期実測において、放射パネルからの冷気の流下特性を確認できました。そこで今回は、その冷気を意図的に誘導し、より快適な空間を作り出すための工夫を放射パネルに施し実測を行いました。写真のように垂直パネルにアルミホイル板を、クリアランスを設けて設置することで冷気の誘導を行います。

施工後の冷気の動きをコンター図で確認すると、垂直パネルからの冷気がパネル間において収束している様子が見られ、緩やかな下降気流を生み出すことができました。

垂直温度分布とコンター図

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(3)クール/ヒートチューブによる熱利用

地中熱を利用して外気を処理し、2~5階トイレへ給気し、共用空間の環境改善と自然換気のベストバランスを考えています。熱環境や空気環境の教育・研究にも活用しています。

年間運転データ(2014年9月~2016年6月)<環境・省エネ活動(3)>


2016/08/10 Posted by kgu9. Category: (3)クール/ヒートチューブによる熱利用

年間運転時の外気温度とクール/ヒートチューブ出口温度の温度推移を確認しました(図1)。外気温度とクール/ヒートチューブ出口温度との温度差は0~7.6℃程度、平均温度差は2.3℃であることがわかりました。

図1 温度推移

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(4)臨海地域での地中熱利用ヒートポンプシステム

地下水位の高い地中に熱交換パイプを通し、ヒートポンプ放射パネルと連動し、学生たちの集う学生ラウンジを快適な環境に保っています。

2015年12月~2016年3月 冬期データ<環境・省エネ活動(4)>


2016/10/07 Posted by kgu9. Category: (4)臨海地域での地中熱利用ヒートポンプシステム

地中の温度は年間を通してあまり変動しないことが特徴です。図1に、地中熱と外気温度、放射空調システムに用いる地中採熱間内を流れる冷媒の温度を示します。緑色の線で表した外気温度が約2℃~35℃程度まで大きく変化をするのに対し、紫色の線で表した地中の温度は、夏も冬も20℃付近を前後していることがわかります。地中熱を利用した放射パネルによって暖められた学生ラウンジは、自然と人が集まる心地の良い空間になっています。

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(5)大空間製図室と空調システム

ルーバー、ハイサイドライト等の建築手法とダクト空調、床置形ペリメータ空調、シーリングファンを組合わせ、季節や室利用状況に応じた室内環境を学修しながら設定できます。

2015年5・6月 中間期実測<環境・省エネ活動(5)>


2016/07/29 Posted by kgu9. Category: (5)大空間製図室と空調システム

2015年5月29日~6月3日、5号館503製図室において、中間期温熱環境実測を行いました。

503製図室には、腰の高さまでの窓、その窓と窓との間にキャブコン(換気スリット)が、室上部南北側面にハイサイドライト(高窓)、天井にはシーリングファンが設けられています。

キャブコンは夜間も日中も常に開、空調機器は運転せずに、腰窓のみ開や高窓も開、シーリングファン運転の有無など、条件を変えて室内温湿度等の測定を行いました。

測定機器は冬期実測同様、塩ビパイプにおんどとりを取り付けて室内全体に配置、室の中央・南北にグローブ球を設置しました。

一例として、6月2日の実測結果を示します。下記の図より、腰窓に加えて高窓を開け、シーリングファンを運転したところ、室内の気温は下がり、PMVも概ね快適域(±0.5)に収まる結果となりました。

図 2015/06/02(人員有、CF有、室中央パイプ№11)

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(6)節水と雨水利用

地下ピットに雨水を貯留し、節水形トイレへの給水を行い、積極的な雨水利用を促進しています。このシステムは給排水衛生設備の学修にも活用しています。

2017年 5号館水使用量<環境・省エネ活動(6)>


2018/01/17 Posted by kgu9. Category: (6)節水と雨水利用

2017年の水使用量です。

2017年9月以降を見ると、授業期間中である10~12月の水使用量が多くなっていることが分かります。
10月については降水量が多かったため、上水補給による雑用水使用量はゼロ、建築・環境棟のトイレ洗浄水は全て雨水利用によって賄うことができました。

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(7)光環境と昼光利用

5号館室内の光環境について、実測を行い、データを日々の学修に使用しています。

夏期光環境実測の様子と結果<環境・省エネ活動(7)>


2016/10/13 Posted by kgu9. Category: (7)光環境と昼光利用

中間期の光環境実測に引き続き、7月14日及び8月3日~9日にかけ、5号館の夏期における光環境の実測とアンケート調査を行いました。

5号館に取り入れられたブラインドや水平ルーバー、垂直ルーバー、ハイサイドライトなどの光環境調整技術を夏期の空調運転時の状態に設定し、対象室の照度と輝度の実測を行いました。

写真は503(大製図室)の実測を行っている様子です。

写真1
写真2
写真3
写真4

夏期では503(大製図室)、501・505(スタジオ)、4階の各室(研究室、大学院演習室)において、ハイサイドライト、室内ブラインド、水平ルーバーなどの環境調整技術について、空調負荷を少なくするために日射を遮る状態にしています。そのため光環境においては各室ともに日射遮蔽効果が高く、照度・輝度ともに中間期に比べ値が低い結果となりました。(写真5.6 輝度分布、照度分布)

写真5
写真6

今後は、冬期における実測を行い、昼光利用や温熱環境との関係性を考え、各室の光環境において快適な利用方法を検討していきます。

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(8)再生可能エネルギーの利用

5号館屋上東側に太陽光パネルを設置しました。電気設備の学修を充実させています。それ以外にも地中熱を冷暖房に活用しています。

2017年 太陽光発電電力量<環境・省エネ活動(8)>


2018/01/17 Posted by kgu9. Category: (8)再生可能エネルギーの利用

2017年の太陽光発電電力量です。

9月以降の発電電力量を見ると、他の月に比べてやや低い傾向を示しました。

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(9)ZEBへの取り組み

学生たちが、中央監視装置で収集した屋外気象条件・室内要所の温湿度・設備機器等の温湿度データなどを解析し、エネルギーの運用に役立たせています。

2017年 5号館の一次エネルギー消費<環境・省エネ活動(9)>


2018/01/17 Posted by kgu9. Category: (9)ZEBへの取り組み

2017年の年間一次エネルギー消費量です。

9月までは先に報告していましたが、10月以降を見ると、中間期である10月・11月は2016年よりも一次エネルギー消費量が少なくなっており、建築・環境棟の各種環境調整技術の中間期モードでの運転が定着してきたのではないかと考えれます。

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(10)メンテナンスと維持管理

建物や建築設備のメンテナンスと維持管理の大切さを、学生たちが体験を通し学んでいます。設備リニューアル・保全の学習教材としても活用しています。

2016年6月 男子小便器尿石状況確認<環境・省エネ活動(10)>


2016/06/23 Posted by kgu9. Category: (10)メンテナンスと維持管理

2016年6月5日には、学生が卒業研究の一環として、男子小便器への尿石付着状況を診断調査し、今後の維持管理におけるデータ収集を行いました。竣工から1.5年が経ちましたが、施設管理課との連携により排水管清掃への提言も行っていきます。

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(11)総合的な建築・環境教育

環境・省エネルギー活動に関する教育を実際に測定したデータも利用しながら行っています。この建物を活用した環境・設備教育に関する勉強会や講演会の内容も紹介します。

建築・環境棟の学修教材としての活用<環境・省エネ活動(11)>


2016/06/20 Posted by kgu9. Category: (11)総合的な建築・環境教育

建物を学修教材として活用しています。天井部分には、設備機器や配管、ダクトが設置されています。現しになった天井の懐を実際に測ってみると、建築図を描く際に設備機器をおさめるためにどのくらいの天井の寸法を取ればいいのか、体験的に学ぶことができます(写真1)

写真1 天井懐を測る

建築・環境学部の全学年に対し、建築・環境棟が学修教材として役立っているか等、アンケート調査を実施しています。アンケートの調査結果から、「5号館(建築・環境棟)は教育・研究の教材として効果があると思いますか」の質問に対して、全体の約85%の学生が「効果がある」と回答していました(写真2,3)。

写真2 環境教育に関するアンケート調査

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(12)建築・環境教育や技術開発への様々な取り組み

関連施設の大沢記念建築設備工学研究所での研究・教育、教員や学生が共同で取り組んでいる建築・環境プロジェクトを紹介します。

建築環境棟における環境教育<環境・省エネ活動(12)>


2016/10/27 Posted by kgu9. Category: (12)建築・環境教育や技術開発への様々な取り組み

2016年度春学期、4月の段階で1年生に対してのアンケートを行っています。さらに、入学後半年が経過した7月に再度アンケート調査を行いました。

春学期のアンケート結果から「建築・環境棟(5号館)は教育・研究の教材として効果があると思いますか」の質問に対して、4月の結果では「非常にある~どちらかといえばある」が89%でしたが、7月の結果では「非常にある~どちらかといえばある」が92%を示しました。半年が経過し、教材としての効果は3%上昇しました。

1年生は入学前のオープンキャンパスを初めとして、入学後からはオリエンテーション、専門基礎科目の履修によって建築・環境棟の環境調整技術にふれる機会も多いため、環境調整技術についての認知度が上昇したものと考えられます。

環境調整技術に対する認知度は20項目中16項目が上昇していて、その中でNo.14(天井放射パネル)が21%と最も認知度が上昇しました。また、No.15(全熱交換器)、No.16(BEMS)は4月・7月共に認知度が低いことが分かりました。

今後、環境設備系研究室では、学生の環境調整技術への理解度を高めるために環境教育シートを作成し、環境教育シート導入後の理解度に関してアンケートを実施する予定です。

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