授業紹介
環境共生デザインコース
パッシブデザインスタジオ
第14回 第2課題提出、採点、講評会<パッシブデザインスタジオ>
- Category: パッシブデザインスタジオ
- Posted by kgu5.
- 2022/07/29
2022年7月21日(木)「パッシブデザインスタジオ」第14回目の授業が行われました。
本日は第二課題「New Normal時代のオフィスビル」の図面最終提出日です。先生方が学生の提出した図面を一つ一つ丁寧に評価し、採点を行いました。採点の結果、相澤幸司君、飯田佳介君、岩渕悠也君、小林那菜さん、田見拓也君、野崎誠喬君、濱吉蘭さんの7名が選ばれ、最終講評会で発表を行いました。発表した学生の順に作品を紹介します。
田見拓也君:「道」
建物を東側の通りに対してオーバーハングさせ、トンネルのようにすることで、横浜スタジアム、協会、開港広場、大さん橋と一直線に続く動線を意識した建物を提案した作品。3つの壁面(ファサード)が特徴的であり、南東側にはダブルスキンを設け、夏期、中間期、冬期に応じてモード切替することで冷暖房負荷の削減、北側には越冬できる種類の植物(アイビーなど)を用いた緑のカーテンにし、隣接する教会を引き立たせるような背景の形成、西側にはパイプシャフトを出すことで点検や交換が行いやすくし、日射を利用した給湯負荷の削減。設備計画では、高置水槽方式を含めた給水方式の採用や電源部分を地下と屋上に複数設置することで災害時におけるBCP対策を検討している。コンセプトシートの表現が素晴らしく、全体の完成度が高いことで評価された。
野崎誠喬君:「コンパニオン」
敷地は十字路に面しており、1階部分の敷地半分を広場にすることによって、地域の人々が集まる場として利用できるような建物を提案した作品。周辺環境に配慮し、屋上を緑化することでオフィスを利用する人々の癒しになるように計画。南東側には可変可能な垂直ルーバー、南西側にはダブルスキンを設けることで日射コントロールを行い、冷暖房負荷の削減が可能となる。設備計画では、ニューノーマルな働き方に応じて選択できるように、オフィス階ではタスクアンビエント空調システムを採用。図面表現に課題はあるが、模型の完成度とコンセプト表現が評価された。
相澤幸司君:「ふれあいの渦」
Covid-19の感染拡大の影響で仕事の場が会社から自宅へと変化したことを背景に、偶発的な交流がなくなり新しい「モノ・コト」を生み出すきっかけについて問題提起している。After Covid-19 が謳われる今、多くの場所でコミュニケーションを生み出すオフィスを提案した作品。会社に出勤して勤務する本来の形式が重要だと考え、部屋と部屋の隔離を生み出す壁ではなく、空間につながりを生むことができる段差という手法を用いた。螺旋状にスキップフロアを配置することでインフォーマルコミュニケーションが広がる空間を計画している。設備計画では、タスクアンビエント照明を取り入れることで作業空間だけを照らすことで省エネルギー化を図った。コンセプトを含め、全体の完成度が高いことが評価された。
飯田佳介君:「海風とレンガとみらい」
海の近くに建つ建物として海風を活用したオフィスビルを提案した作品。1、2階は周辺の歴史的建築物に合わせレンガを基調とし、3階からは、現代のビルの見た目にすることで、みなとみらいの景観に合わせた外観である。建物の中心に大きな吹き抜けを設けることで風や自然光を取り入れ、室内の明るさに合わせて自動調光する照明を設置し、日中の消費電力を抑えている。空調設備は、音楽スタジオやラジオ局など個室が多いため、個別式空調方式にして各室で空調を行えるようにし、スタジオなどの開口部を設けにくいところには、全熱交換器を設け、換気を行うことができるように計画している。コンセプト表現に課題があるが、図面表現が素晴らしく評価された。
濱吉蘭さん:「Layered Office」
コロナ禍や働き方改革により変化し、広がった働き方にはメリットがあるのに対し、デメリットもある。そのデメリットにも対応したニューノーマルな働き方に合わせたオフィスを提案した作品。WCには、男性用・女性用の室に加えて、ALLGENDER用の室も設け、幅広いジェンダー(LGBTQ)にも対応する計画。設備計画では、1∼2Fは中央式空調方式、3∼7Fのオフィスは個別式空調方式とし、利用していない場合はOFFにするなど利用状況や出勤形態に合わせた空調計画である。コンセプトシートが手書きのスケッチ等で分かりやすく表現されており、全体の完成度が高いことが評価された。
岩渕悠也君:「Public Square」
敷地周辺は横浜中華街や大さん橋、赤レンガ倉庫など多くの観光地や本庁をはじめとした公共機関、駅、様々なオフィスが立ち並び、神奈川県内でも特に人口密度が高く人通りも多いため、誰でもふらっと立ち寄ることのできるオフィスを提案した作品。多くの人が立ち寄ることによって、新しい交流の場としても利用でき横浜の新たな発展に繋がることを目指した。快適なオフィス空間だけでなく、周辺のオフィスで働く人や通りすがりの人など誰もが立ち寄りたくなるよう周辺の緑化や建物の緑化そのほか様々な要素を取り入れている。4~7階のオフィスは島型オフィスのため各デスクに集中したタスクアンビエント照明とし、残業時間帯や土日などオフィスに滞在する人数が少ない場合でも大きなオフィスを使わずにコワーキングスペースで作業をすることで省エネルギー化が図れる計画となっている。図面表現及び模型、全体の完成度が高いことから評価された。
小林那菜さん:「変わりゆくNormalに伴走するオフィスビル」
みなとみらい線日本大通り駅から直結でき、「横浜高速鉄道」と「東急電鉄」の共同オフィスビルを提案した作品。1階は直通運転にあたるまでの会社の経緯や魅力を伝える「鉄道ギャラリー」及び関内を利用するオフィスワーカーや観光客向けのカフェとし、2階はテラス及び多目的ホールとなっている。対象敷地周辺には、高さのあるビルが多く、海が近いため、ビル風や海風を上手く受け流し、敷地前を歩く人に圧迫感を与えないようにファザードは湾曲したカーテンウォールを設置している。オフィス空間も長時間の利用に備えて、外壁の軒としてのバルコニーや垂直ルーバーで日射を遮蔽。また、外周のバルコニー部分を機械スペースとすることで、躯体のライフサイクルを視野に入れた計画となっている。図面表現及び模型、全体の完成度が高いことから評価された。
先生方から総評として、お言葉を頂きました。
・石崎先生
設備を取り入れると、より細かな修正が出てくるため、図面をブラッシュアップしておくとよい。
・小原先生
アイデアを図面に表現していない学生は表現してほしい。また、設備コンセプトは全体の設備計画が一目でわかるような図表があると良く、時間のスケジュール、人の利用、空間の大きさを考慮して書き込んでいけると良い。将来に向けて、足元を見るばかりでなく、自分のやりたいことを探り、夢を描くことも大事である、というお言葉をいただきました。
・千野先生
図面表現が良くできているがコンセプト表現が惜しい人、コンセプト表現が良くできているが図面表現が惜しい人が多く見られたことが残念であった。建物をたくさんみて学び、今後の課題に取り組んでいってほしい。
・中村先生
秋学期の建築環境デザインスタジオにも図面を使用するため、夏季休業の間に図面の修正をしっかり行っておくこと。
・山口先生
秋学期の建築環境デザインスタジオでは、設備図は手書きで書きこんでいくため、図面をデータ化するなどきちんと整理しておくこと。
パッシブデザインスタジオの学生のみなさん、半年間大変お疲れさまでした。自分のやりたいことを悩みつつも形にしていく姿を見て、感激致しました。秋学期の建築環境デザインスタジオでは、設備設計に取り組みます。意匠から設備まで「計画・設計」に取り組む授業は大変貴重であるため、就活などさまざまな場面で活かせる材料になります。夏季休業の間にブラッシュアップし、しっかり準備して臨みましょう。
TA宮越、金子