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建築・環境学部 建築・環境学科

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[理工学部、建築・環境学部教養学会ミニ講演会](第51回理科系学生のための公開英語講演会)

  • Posted by kgu8.
  • 2022/10/25.

[理工学部、建築・環境学部教養学会ミニ講演会](第51回理科系学生のための公開英語講演会)

Brain and Drug Addiction : Brain Can Modulate Reward System
『脳と薬物依存』

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講師: 理工学部理工学科
簑 弘幸

2022年10月20日に理工学部、建築・環境学部教養学会では、理工学部理工学科、健康科学・テクノロジーコースの簑弘幸氏を講演者として招聘し、標記タイトルによる5回目の英語講演会を開催した。
米国国立薬物濫用研究所(National Institute on Drug Abuse (NIDA))のホームページには“In fact, some drugs can change the brain in ways that last long after the person has stopped taking drugs, maybe even permanently. (事実、いくつかの薬物は人が薬物を摂取することを止めた後も長く続くような、ことによると永遠に続くようなやり方で脳を変化させることがある。)”とあり、このような警句が繰り返し叫ばれているにもかかわらず、麻薬の使用に関わり仕事、地位、名誉、家庭を失う一般の人々、芸能人、アーティストなどの著名人の事案は後を絶たず、私たちの日常生活の近辺にも危険は忍び寄っているようである。講師においてはこれまでの講演会を通じて、生体医工学の観点から麻薬中毒に至るメカニズムと危険性を啓蒙し、少なからぬ理科系の受講者に対して将来の災禍をまぬがれるべき道筋を示されてこられた。
講演全体の趣旨は、(1)報酬系(腹側被蓋野ventral tegmental area+側坐核nucleus accumbens)は脳内での快感の中枢である;(2)報酬系は動機づけや学習といった人の精神を制御している;(3)薬物は報酬経路におけるsynaptic transmissionに変調を引き起こし、人の精神状態を変える、というものであった。
薬物を反復的に摂取する人は、その薬物に対する「耐性」toleranceを高めることになり、引き続き継続して薬物を摂取すると「依存」dependenceという状態が摂取した人に起こる。薬物の使用が依存状態において中止されると、薬物使用者には「禁断症状」withdrawal symptomsが生理的な反応として起こるが、このような症状は苦痛を伴うのでこれを避けるために使用者は再び薬物を摂取することになってしまうという悪循環に陥る。
人の脳内にはendocannabinoidと呼ばれるマリファナの成分が内在している。もし人が更に外部からマリファナを吸引するとマリファナの成分THCの濃度が上がり脳の様々な部位、特に報酬経路において過度の活性化が起きる。THCの濃度が上がると、THCは抑制を司る前シナプスの受容体に結合してしまう。この結果としてVTAの活動が促進されて活動電位が高まりドーパミンの分泌の促進、側坐核の活動の活発化につながり、必要以上に快感が継続することになる。

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一方、マリファナとは異なりコカインは人の体内には存在しない人工的な物質であるので中毒性がさらに強く、コカインの接取による快感はドーパミンがシナプス間隙に通常よりも長い時間にわたり滞留する結果として生じる。通常、腹側被蓋野のニューロンの端末からシナプス間隙に放出されたドーパミンは側坐核nucleus accumbensのニューロンの端末の受容体に結合し、情報を伝えたのちに、再び腹側被蓋野VTAのニューロンの端末へリサイクルのためにとりこまれる。コカインはその取込みポンプに結合することにより、放出されたドーパミンが再び腹側被蓋野のニューロンの端末へ取り込まれることを妨害し、ドーパミンがシナプス間隙での滞留を招くことになる。
日本語のセクションにおいては、マリファナ成分(THC)は人の脳内に生得的に存在する物質であり、それにより人が健全な日常生活を営むための(寝る、食べる、茶をのむ、自尊心が満たされるなどの際に得られる)正常な快感が創出されているという事実がより具体的に説明され、健全な快感の創出の仕組み対する受講者の認識が大いに深められた。また講師の明瞭な英語の発音に触れ、受講者の英語学習の動機づけが高められる機会を得ることが出来た。
質疑のコーナーにおいては多くの質問が寄せられ講師によりすべてに回答が与えられた(下記に一部記載)。

Questions and Answers:

Q. It is said that narcotics, if restricted to medical purposes, are not addictive. Can we trust in it?
医療用麻薬は医療目的で使用した場合には依存性が見られないと 言われていますが、信用して良いでしょうか?
A. No, I would have to answer “no” to your question. Because the main component of both recreational and medical marijuana is the same, i.e., cannabis, recreational marijuana has similar addictive effects to medical marijuana.

Q. Do all illegal drugs have similar effects on the human body? If not, can they be classified into different types according to the effects they cause to the human body: specifically, how are the effects different among each drug?
全ての違法薬物は同様の効果を人の体にもたらしますか?そうで ない場合は、どのように異なるタイプに区分され、どのような効果の違いが薬物間にありますか?
A. I don’t think that all illegal drugs have similar effects on nerve cells. As I told you as an example, the mechanism of how marijuana exerts its effect is different from that of how cocaine does. Cocaine as a drug is very dangerous because it’s an artificially produced object which are chemically synthesized. In contrast, there exist cannabinoids, or THC, which is a main ingredient of marijuana, in the healthy human body indigenously to activate the reward pathway. That’s the difference.

(本発表においては米国、National Institute on Drug Abuse (NIDA)の子供向け薬物理解のためのプログラムで使用されるスライドを講演会プレゼン用PPT作成に活用させていただきました。ここに謝辞を申し述べます。)

2022年10月20日(木)開催