授業紹介
建築デザインコース
総合デザインスタジオ
第14回〈総合デザインスタジオ〉
- Category: 総合デザインスタジオ
- Posted by kgu3.
- 2022/08/01
担当:中津秀之、柳澤潤
専任教員:黒田泰介、古賀紀江、酒谷粋将
非常勤講師 (建築家):高橋寛、岡路明良、針谷將史、常山未央、納谷学
助手:村山徹、Yap Minwei
TA:風間楓(M1)、黒柳静希(M1)、村瀬巧(M1)、村田錬太郎(M1)
2022年7月25日(月3・4限)「建築・都市デザインスタジオ」と「すまいデザインスタジオ」の合同授業「総合デザインスタジオ」の第14回目が行われました。今週は第二課題の最終発表を行いました。各トラック数名ずつ選出し、全体で発表を行ってもらいました。
今週はゲストクリティークとして、Studio GROSSからSebastian GrossさんAnne Grossさんをお招きしました。まず、柳澤先生から2人の紹介をしていただきました。
新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として、自然換気、マスクの着用、ソーシャルディスタンスが徹底されました。この授業では、「トラック1(公共系)」、「トラック2(都市系)」、「トラック3(リノベーション系)」、「トラック4(住居系)」、「トラック5(論文)」という五つのトラックに分かれて行われる授業です。各トラックに二人の教員が付き、課題が出されます。下記各トラックの授業様子です。
〈トラック1〉
担当:高橋寛、Yap Minwei TA:黒柳静希
2022年7月25日総合デザインスタジオ第14回目の授業が行われました。今週はトラック内講評になります。各トラックから数名代表で選出し、全体でプレゼンをしてもらいました。
トラック1からは伊藤さん、小林さんを選出しました。
伊藤さんは「居場所のための舞台装置」と題して、四角いボリュームを大小様々なグリットに分解し、多種多様な人がいる関内に人の日常(演目)が共有される場所を提案しました。先生方からの講評としては、中間の時よりも密度感が出たのは良いが、今度はその敷地に集約してしまい、歩行者空間に対しての広がりが薄れてしまったのではないかという意見をいただきました。
小林さんは「Beyond the Contour」と題して、敷地の持つ高低差を利用しランドスケープと絡めたアリーナを提案するものでした。先生からの講評としては、地形を保つのは環境を作る上で大事だという視点は面白が、地形と連動して建築ができていく過程が見られたらより良かったという意見をいただきました。
代表に選出されなかった学生の中にも興味深い案が複数ありました。学生一人一人独自の視点で提案出来ていた為、見ていて大変面白かったです。選出者との差は、ラスト2週間の追い込みだと思いました。今回の授業で学んだことを活かして、卒業設計では最後まで全力で振り切ってください、お疲れ様でした。これからも期待しています!
<トラック2>
担当:針谷將史、中津秀之 TA:村瀨巧
2022.7.25(月)3,4講時目、第14回目の授業が行われました。本日は全5トラック合同での講評会が行われました。トラック2からは市川さん、植松君、高田さん、手塚さんの4名が選出され、代表として発表を行いました。
市川さんは何百年後、建築物が新しいものに生まれ変わっても道は変わらず都市にあり続け、道が今後も都市の個性として残っていくことを目標に道に滞在できるような場を計画するという発表を行いました。植松君は木造密集地から次第に大型のマンション地域になっていく横浜橋周辺エリアにおいて、建築のヴォリュームが変化していくことで横浜橋周辺における本来の暮らしが無くなりつつあることから、横浜橋に新たなヴォリュームを作りだし、横浜橋の個性を残しつつ生活が滲み出る集合住宅を提案するという発表でした。
高田さんは横浜市中区海岸通3丁目において、この通りで過ごしている人の活動が全く見えず、どのように過ごしているのかわからないことや、付近の大通りに比べると通りの景観を重視した植栽配置とは言えず、魅力的とは言えないことから、外と中の境界を曖昧にして人の活動を表出させることで、公共空間における人の新たなライフスタイルが誕生し、新たな交流やその街の個性に繋がるという発表でした。手塚さんは普段からさまざまなヒエラルキーを感じながら生活している中で、特に意識の差が激しい中村川両岸の間に、中間的な役割を果たす輪っかを挿入するという発表でした。
先生方からは二つのエリアを結ぶときに一点集中するのではなく、もっと長く、川に沿って歩けるようなものがあってもいいのではという意見や、現実味のある作品で、リサーチから形にするまでの過程が教師陣の求めるものとなっているという意見、住戸の一つ一つが小さく存在するのは横浜橋のスケールには小さすぎるのでもっと大きいヴォリュームの方があっているのではという意見などを頂きました。
8月6日に行われるバーティカルレビューへは植松君と手塚さんの2名が選ばれました。代表に選ばれた学生も選ばれなかった学生も先生方から頂いた意見を踏まえ、引き続きブラッシュアップしていって欲しいと思います。
みなさん半年間お疲れさまでした。「都市の個性」という課題に対してリサーチ課題から設計課題まで、最後まで考え抜こうという姿勢がとても感じられました。これからの卒業研究に向けてとても有意義な課題になったのではないでしょうか。この授業で考えたことを忘れず、卒業研究に取り組んで行って欲しいと思います。
(TA:村瀨巧)
〈トラック3〉
担当:常山未央、村山徹 TA:風間楓
2022.7.25(月)、第14回目の授業が行われました。今日は総合デザインのスタジオの最終提出、最終講評会です。30分間で学生が提出したプレゼンボードや図面、模型などを先生方が採点しながら見て回り、各トラック2~4名を選出し、発表・講評を行いました。
リノベーショントラックでは、飯濱由樹さん、櫻井響子さん、渡辺和士さんの3名が発表しました。
飯濱さんは、全国で2番目の乗降客数を誇る、商業都市として栄えてきた池袋東口に着目していました。コロナウイルスの蔓延によってテレワーク化が進んだことで都市における住まい方は大きく変化し、住まいと職場の垣根がなくなったことで、都市に住まう人々のサードプレイスが求められてきた。そこで、歩行者空間に点在する既存のストリートファニチャーに仮設のストリートファニチャーを設置することで、都市における新たな賑わいを演出する。という提案です。講評では、「この提案が、池袋東口よりも、活きる場所を探してみて欲しい。」というご意見などを頂きました。
櫻井さんは、小学校のリノベーションに着目していました。道路に面した築56年の古い西校舎を、地域コミュニティの場を入れ込んだプログラムを元に細部のチューニングをリノベーションとして行うと共に、現在小学校との関りがない卒業生や、近くに住む大学生、なかなか家から出ることが少ない高齢者などが、小学校を拠点に地域に広がるプログラムを通して交わるきっかけをつくり、小学校から広がり根付くネットワークの構築を提案しました。講評では、「学びの場だった建物を、新しい学びの場に展開するのは資源としても、プロジェクトとしても、良い提案。」というご意見などを頂きました。
渡辺さんは、第一課題で、BankART1929という街を再生していくプロジェクトについて調査し、第二課題では、拠点を複数もち都市の規模でリノベーションすることを考え、都市のすき間をネットワークでつなぐ街をつくることを目指し、1989年の開館から30年近く経ち、現在大規模改修工事を行っている変化のタイミングで、都市のすき間を活用して横浜美術館が街に対してアートを開放するプログラムを提案しました。講評では、「環境は良い場所なのに、環境とは切り離されたオブジェクトが置かれている。そこに着目して、手を加えていくのは良い考え。」というご意見などを頂きました。
この3名はリノベーショントラックの中でも特に手を動かすのが早く、模型の量も多かったです。また、トラック3全体に言える事として、社会を巻き込めるような提案を出来たことは素晴らしい事だと思います。ただ、すべてをやろうとするあまり、一番大切な設計内容が薄いように感じました。
第一課題から第二課題まで、全員が常に試行錯誤し、精一杯設計に取り組んでいました。途中で行き詰っている学生も多かったですが、最後は完成度の高いものを提出出来ていました。この総合デザインスタジオで学んだことは、秋学期の課題である、卒業制作・卒業論文にも必ず活きてくると思います。半年間、お疲れ様でした。
(TA:風間)
<トラック4>
担当:岡路明良、納谷学 TA:村田錬太郎
今回は、授業最後の最終講評です。各トラックから代表者を選出し、全体で発表を行ってもらいます。トラック4からは、黒木くん、三上くんが選出されました。
黒木くんは、福富町にある長い通りを既存のビルを改築しながら「縦軸」中心の関内エリアに「横軸」を挿入することで新たな“つながる”を創り出し、図面を描きあげました。三上くんは、トラック全体の中でも特に川に一番アプローチできていた作品で、川と“つながる”をテーマに魅力的な模型をつくりました。この二人以外にも、魅力的な作品は多くありました。しかし、“つながる”を建築がつくるというのは想像よりも難しかったということがよく分かったと思います。
授業の最後に、トラックごとに振り返りを行いました。トラック4は住居を主に設計するトラックだったのですが、肝心の住居の設計にまで辿り着かなかった学生が多くいました。“つながる”をテーマに都市的な視野から設計を始めたために、プライバシーが必要な「住居」というプログラムをむしろ邪魔に感じている学生が多かったようです。「都市的な視野で“つながる”を考えた住居」というテーマは、とても難しく、同時にとても重要なテーマだと改めて思いました。このスタジオで、満足いく作品がつくれたと感じている学生は多くないと思います。卒業設計では、これまでの成功、失敗を生かして、粘り強く頑張ってください。
(TA:村田錬太郎)
<トラック5>
担当:中津秀之、黒田泰介、古賀紀江、酒谷粋将
トラック5からは中尻さんと福田さんが選出され発表を行いました。中尻さんは、歩くことを主軸に置く街になることで、日々の中で住民の徒歩が自然と促進されるのか、そうしたまちにはどのような特徴があり、人々の循環の仕組みに何か共通点があるのかを抽出すること、また人々が歩きたくなる街とは、一体どのような魅力があるのかを明らかにする。そして徒歩促進と健康増進には因果関係があるのかを分析するという研究の発表でした。福田さんは働く親が子どもを連れて仕事をすることのできる「子育てコワーキングスペース」において、親の姿が見えることで子が親の方に行ってしまうことや親も子の姿が見えることによって業務に集中できない等の理由により施設の中で親と子が部屋で完全に分離されているものがほとんどであることから、上手く親と子の視覚的関係をデザインすることによって、一室空間の中で共存しながらも、親と子が別々の活動をすることも可能ではないかと考え、親と子の視覚的関係の観点から」みる、両者が共存できるコワーキングスペースのデザインに寄与する知見を得ることを目的とした研究の発表でした。2人ともとても興味深い研究をしており、今回発表が出来なかった学生も含め、卒業研究に向け励んで行って欲しいと思います。